北野勇作


へえ、こりゃまた珍しいもんが来たね。
うん、手紙もそうだけど、郵便配達員なんてね。いや、もうそんなのとっくになくなったと思ってたからさ。で、おたく、人間なの?
えっ、だったことはある? ああ、だったことはある、ねえ。はは、おもしろいねえ、そういう言いかたするんだ。いや、わかるわかる。うん、あるある、そういう感じ。ま、あるあるだよね。そうそう、なんかもう、途中からわかんなくなっちゃうんだよね。医者にもわかんないんだから、本人にわかるわけないよね。
あっ、これ? いやー、手紙なんてもの、ほんとひさしぶりっていうか、そんなもんがあることもすっかり──。
えっ、手紙じゃないの? えっ、郵便配達員でもない? それを早く言ってよ、っていうか、それじゃ、何?
おお、ふーん、そうなんだ。へえー、これがそうなんだあ。初めて見た、っていうか、もうとっくに終わったと思ってたよ。まだやってんだ。そっか、まだやってんのかあ。
うんうん、知ってる知ってる、そのくらいは知ってるって。馬鹿にしちゃいけないよ。
はー、これかあ。ほおほお、なるほどねえ。いやいや、話には聞いてたけど、ほんとにそうなんだね。そっかあ、ほんとにそうなのか。
ほんとに赤いんだ。





北野勇作
小説を書いてます。

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